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中国文学 李白・杜甫・韓愈・李商隠と女性詩 研究

詩の訳注解説をできるだけ物語のように解釈してゆく。中国詩を日本の詩に換えて解釈とする方法では誤訳されることになる。 そして、最終的には、時代背景、社会性、詩人のプロファイルなどを総合的に、それを日本人的な語訳解釈してゆく。 全体把握は同系のHPhttp://chubunkenkyu.byoubu.com/index.htmlを参照してもらいたい。

Ⅳ 政略婚《§-4 蔡文姫史話》5.2.悲憤の詩其の二 訳注解説#6  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ10854

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Ⅳ 政略婚《§-4 蔡文姫史話》5.2.悲憤の詩其の二 訳注解説#6  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ10854

Ⅳ 政略婚《§-4 蔡文姫史話》5.2.悲憤の詩其の二 訳注解説#6

 

 

Ⅳ 政略婚《§-4 蔡文姫史話》5.2.悲憤の詩其の二 訳注解説#6  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ10854

そこに加えて、わたしと同時期に拉致された仲間達が大勢で、お別れの挨拶を言いに来てくれ見送ってくれた。

生き地獄の様なところからこの地に一緒に来て、わたし独りだけ帰っていくことができたのを歓び慕ってくれたが、別れを哀しみ、叫び声で、切り裂かれてしまうほどである。 

出発の時となっても馬はそのために立ち止まって躊躇し、馬車は、そのためでも進む向きを変えないで前進しだした。 

帰還の行列に来たもの、見る者はすべて皆、すすり泣きをし、道を行く人さえも、また、子供との別れを知って、嗚咽して泣いたりしたのである。 

 

中国史・女性論

 

 

Ⅳ 政略婚 (近隣国・異民族に嫁いだ公主)

 

-§-3 吐蕃王に嫁いだ文成公主

はじめに(唐とティペット王国との関係を背景)

1. 吐蕃王国と吐谷渾

2. 唐と吐蕃の関係

3. 文成公主の降嫁

 

§-4 蔡文姫史話

1. 胡騎に劫られ去られた蔡文姫

2. 蔡文姫について

3. 後漢末の政治の乱れ

4. 黄巾の乱と軍閥の混戦

5. 悲憤の詩三首

6. 南匈奴部と後漢帝国との関係

7. 南匈奴部の反乱と分裂

8. 帰都の実現

9. 母子別離の情

10.  胡笳十八拍 漢魏 蔡文姫  訳注解説

 

 

 

 

-§-4 蔡文姫、史話

 

5. 悲憤の詩三首

         その二 6回目

 

 

 

漢魏 蔡文姫 《悲憤詩三首》

 

 

 

悲憤詩三首 其一

漢季失權柄,董卓亂天常。志欲圖簒弑,先害諸賢良。逼迫遷舊邦,擁主以自彊。

海内興義師,欲共討不祥。卓衆來東下,金甲耀日光。平土人脆弱,來兵皆胡羌。

獵野圍城邑,所向悉破亡。斬截無孑遺,尸骸相牚拒。馬邊縣男頭,馬後載婦女。

長驅西入關,迥路險且阻。還顧邈冥冥,肝脾爲爛腐。所略有萬計,不得令屯聚。

或有骨肉倶,欲言不敢語。失意機微閒,輒言斃降虜。要當以亭刃,我曹不活汝。

豈復惜性命,不堪其詈罵。或便加棰杖,毒痛參并下。旦則號泣行,夜則悲吟坐。

欲死不能得,欲生無一可。彼蒼者何辜,乃遭此戹禍!

 

悲憤詩三首 其二

邊荒與華異,人俗少義理。處所多霜雪,胡風春夏起。翩翩吹我衣,肅肅入我耳。

感時念父母,哀歎無窮已。有客從外來,聞之常歡喜。迎問其消息,輒復非鄕里。

邂逅徼時願,骨肉來迎己。己得自解免,當復棄兒子。天屬綴人心,念別無會期。

存亡永乖隔,不忍與之辭。兒前抱我頸,問母欲何之。人言母當去,豈復有還時。

阿母常仁惻,今何更不慈?我尚未成人,柰何不顧思!見此崩五内,恍惚生狂癡。

號泣手撫摩,當發復回疑。

兼有同時輩,相送告離別。慕我獨得歸,哀叫聲摧裂。馬爲立踟蹰,車爲不轉轍。

觀者皆歔欷,行路亦嗚咽。

 

悲憤詩三首 其三

去去割情戀,遄征日遐邁。悠悠三千里,何時復交會?念我出腹子,匈臆爲摧敗。

既至家人盡,又復無中外。城郭爲山林,庭宇生荊艾。白骨不知誰,從橫莫覆蓋。

出門無人聲,豺狼號且吠。煢煢對孤景,怛咤糜肝肺。登高遠眺望,魂神忽飛逝。

奄若壽命盡,旁人相寬大。

爲復彊視息,雖生何聊賴!託命於新人,竭心自勗厲。流離成鄙賤,常恐復捐廢。

人生幾何時,懷憂終年歳!

 

 

 

 

 

 

蔡文姫 《悲憤詩三首 其二》訳注解説

 

 

 

 

 

 

悲憤詩三首 其二  漢魏 蔡文姫

#1

悲憤詩三首 其二

その二(蔡文姫が異民族の地での生活している時のことを歌う)

邊荒與華異,人俗少義理。

辺疆の地は中華、中原とは全く異った生活様式となっており、その地の人の風俗は、人の踏み行なうべき道を缺いている。 

處所多霜雪,胡風春夏起。

生活しているところは、とてつもなく雪や霜が多く、胡風というもの、本来秋の西風と言うべき風が、その西風が春と夏にも起こるのである。

翩翩吹我衣,肅肅入我耳。

その風は、漢衣のわたしのころもに吹いて、ひらひらと巻き上げてしまうし、部屋に入ってもしゅうしゅうと私の身に聞こえてはなれない。 

#2

感時念父母,哀歎無窮已。

折に節して、父母のことを強く心に思うし、連れ去られた哀しみと歎きに孤独が加わり、哀歎が無限にこみ上げてくるばかりである。

有客從外來,聞之常歡喜。

胡地以外の地から来た拉致されてきたものがいると、その「有客從外來」という噂を耳にすれば、その地の事が聴けるといつも喜んだ。

迎問其消息,輒復非鄕里。

その客を歓迎して、いろいろ中原の様子を問い訊ねた。「迎問其消息」するたびに、同郷の者ではないことがわかった。


#3

邂逅徼時願,骨肉來迎己。

思いがけなくも僥倖を得たいという願いが通じ、めぐり逢いが実現することになった。肉親のものがわたしを迎えに来てくれた。  

己得自解免,當復棄兒子。

わたしが、この拉致されての境遇から解放されるということは、それは、同時に子どもをすてることになるという条件であった。 

天屬綴人心,念別無會期。

頭によぎるのは、血の繋がった身内のことであり、それは心にまとわりつき、この別れのことを考えれば、もうこの子たちに再び会う期は無い。  

#4

存亡永乖隔,不忍與之辭。

もう、かれらとは、生死を永遠に別のものとするものとして、遙かに離れ去ってしまう。これこそ我が子に、離別の挨拶の言葉をいうことも忍びないのである。

兒前抱我頸,問母欲何之。

子どもは私のところへ、進んできて、わたしの首を抱いてきてはなれず、母に言うには、どこへ行こうとしているのかと、問いかけるばかりである。

人言母當去,豈復有還時。

ほかの人が、母はもうそのまま去っていって、どうしても、ふたたび還ってくる時はないのですよ。 と。

#5

阿母常仁惻,今何更不慈?

お母さんとして、これまでずっと優しく接してきたのに。今は、どうしてこんなにも冷たくしてくるのだろうか。 

我尚未成人,柰何不顧思!

子供の我々は、まだ大人になっていないし、そのことをどうして思いやってくれなかったのか。

見此崩五内,恍惚生狂癡。

この別れの情態に接したために、五臓は裂かれ崩れてしまう思いがしたし、頭がはっきりしないで、心奪われ、ぼんやりとして、発狂して馬鹿になったみたいだった。 

號泣手撫摩,當發復回疑。

わたしは號泣しながらも、二人の子の手を愛撫しているし、出発に当たって、なおもまた、逡巡遅疑して立ち尽くす。 

#6

兼有同時輩,相送告離別。

そこに加えて、わたしと同時期に拉致された仲間達が大勢で、お別れの挨拶を言いに来てくれ見送ってくれた。

慕我獨得歸,哀叫聲摧裂。

生き地獄の様なところからこの地に一緒に来て、わたし独りだけ帰っていくことができたのを歓び慕ってくれたが、別れを哀しみ、叫び声で、切り裂かれてしまうほどである。 

馬爲立踟蹰,車爲不轉轍。

出発の時となっても馬はそのために立ち止まって躊躇し、馬車は、そのためでも進む向きを変えないで前進しだした。 

觀者皆歔欷,行路亦嗚咽。

帰還の行列に来たもの、見る者はすべて皆、すすり泣きをし、道を行く人さえも、また、子供との別れを知って、嗚咽して泣いたりしたのである。 

(悲憤詩三首  其の二)

#1  

邊荒は 華と 異なり,人俗  義理を 少【か】く。

處す所  霜雪 多く,胡風  春夏に 起る。

翩翩として  我が衣を 吹き,肅肅として  我が耳に 入る。

#2

時に感じて  父母を念【おも】へば,哀歎  窮り 已むこと  無し。

客 有り  外 從【よ】り 來れば,之を聞きて  常に 歡喜す。

迎へて 其の消息を 問ふに,輒【すなは】ち 復た 鄕里に 非ず。

#3

邂逅して  時【こ】の 願ひ 徼【もと】むるに,骨肉  來りて 己を 迎ふ。

己【おのれ】 自ら 解免するを 得るも,當に 復た  兒子を 棄つべし。

天屬  人心に 綴【まとは)り,別れて 會する期 無きを  念【おも】ふ。

#4

存亡  永【とこ】しへに  乖【ひら】き 隔つ,之と 辭するに 忍びず。

兒 前(【すす】みて  我が頸を 抱き,母に問ふに 「何にか 之かんと 欲す」と。

人は 言ふ: 「母 當【まさ】に 去りて,豈に復た 還る時 有らんや。」と

#5

阿母は  常【かつ】て 仁惻【じんそく】なりしに,今 何ぞ 更に 慈ならざる?

我 尚ほ 未だ 成人せざるに,柰何【いかん】ぞ 顧思【こし】せざる!」と

此れに 見【あ】ひて  五内【ごだい】 崩れ,恍惚として  狂癡【きゃうち】を 生ず。

號泣して  手を 撫摩し,發するに 當りて  復た 回りて 疑【まよ】ふ。

#6

兼【くは】へて 同時の輩  有りて,相ひ送りて  離別を 告ぐ。

我 獨り 歸るを 得たるを 慕い,哀叫して  聲 摧裂【さいれつ】す。

馬 爲に 立ちて 踟蹰【ちちう)し,車 爲に 轉轍【てんてつ】せず。

觀る者  皆 歔欷【きょき】し,行路  亦た 嗚咽【をえつ)す。

 

 

《悲憤詩三首 其二》現代語訳と訳註解説

 (本文)

#6

兼有同時輩,相送告離別。

慕我獨得歸,哀叫聲摧裂。

馬爲立踟蹰,車爲不轉轍。

觀者皆歔欷,行路亦嗚咽。

 

(下し文)

#6

兼【くは】へて 同時の輩  有りて,相ひ送りて  離別を 告ぐ。

我 獨り 歸るを 得たるを 慕い,哀叫して  聲 摧裂【さいれつ】す。

馬 爲に 立ちて 踟蹰【ちちう)し,車 爲に 轉轍【てんてつ】せず。

觀る者  皆 歔欷【きょき】し,行路  亦た 嗚咽【をえつ)す。

 

(現代語訳)

そこに加えて、わたしと同時期に拉致された仲間達が大勢で、お別れの挨拶を言いに来てくれ見送ってくれた。

生き地獄の様なところからこの地に一緒に来て、わたし独りだけ帰っていくことができたのを歓び慕ってくれたが、別れを哀しみ、叫び声で、切り裂かれてしまうほどである。 

出発の時となっても馬はそのために立ち止まって躊躇し、馬車は、そのためでも進む向きを変えないで前進しだした。 

帰還の行列に来たもの、見る者はすべて皆、すすり泣きをし、道を行く人さえも、また、子供との別れを知って、嗚咽して泣いたりしたのである。 

 

(訳注)

悲憤詩三首 其二  #6

1. その二(蔡文姫が異民族の地での生活している時のことを歌う)

2. 悲憤詩 この作品は『後漢書・列傳・列女傳董祀妻』に載っているものになる。同書によると「…後感傷亂離,追懷悲憤,作詩二章。其辭曰:」として、この五言詩の作品と七言騒体の作品が載せられている。これは、先に載せられた五言詩の方になる。この作品は、胡人が侵入して漢人を拉致していく場面、胡地の情景と別離の情、帰国の三場面に分けられる。作業の便宜上#をつけて分割表示した。

3. 蔡文姫:後漢末期の才媛。蔡の娘。後漢末の天下喪乱のため、結果として胡族に攫われた。

#6

兼有同時輩、相送告離別。

そこに加えて、わたしと同時期に拉致された仲間達が大勢で、お別れの挨拶を言いに来てくれ見送ってくれた。

・兼:加えて。 

・同時輩:(蔡文姫と)同時期に拉致された仲間。

・離別:別離ともする(『古詩源』)。

 

慕我獨得歸、哀叫聲摧裂。

生き地獄の様なところからこの地に一緒に来て、わたし独りだけ帰っていくことができたのを歓び慕ってくれたが、別れを哀しみ、叫び声で、切り裂かれてしまうほどである。 

・慕:なつかしく思う。思いをよせる。したう。

 

馬爲立踟蹰、車爲不轉轍。

出発の時となっても馬はそのために立ち止まって躊躇し、馬車は、そのためでも進む向きを変えないで前進しだした。 

・踟蹰:〔ちちゅう〕ものが行き悩むさま。ためらう。躊躇する。物が連なるさま。漢・樂府の『蒿里曲』に「蒿里誰家地,聚斂魂魄無賢愚。鬼伯一何相催促,人命不得少踟。」とあり、前漢の李陵『與蘇武詩』に「良時不再至,離別在須臾。屏營衢路側,執手野踟。」とある。

・轉轍:車の進む向きを変える。

 

觀者皆歔欷、行路亦嗚咽。

帰還の行列に来たもの、見る者はすべて皆、すすり泣きをし、道を行く人さえも、また、子供との別れを知って、嗚咽して泣いたりしたのである。 

・歔欷:すすりなく。むせびなく。1泣きやんだ後思わずしゃくり上げる,すすり泣く.≡唏嘘.用例「相欷歔」=向かい合ってしゃくり泣きをする.「暗自欷歔」=ひそかにすすり泣く

・行路:路上の道を行く人。或いは、旅路に出た母親(蔡文姫)自身のこととも考えられるか。 

・嗚咽:おえつする。

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プロフィール

HN:
漢文委員会 紀 頌之(きのあきゆき))
年齢:
77
性別:
男性
誕生日:
1946/09/10
職業:
文学者
趣味:
中国文学
自己紹介:
漢詩から唐・宋詩まで基本となる詩人・詩集を各全詩訳注解説してゆく、その中で、これまで他ブログに、掲載した女性の詩を、手を加えて、整理して掲載してゆく。
これまで日本では紹介されていないもの、誤訳の多かった詩などを、時代の背景、出自、その他関連するものなどから正しい解釈を進めてゆく。
毎日、20000文字掲載しているので、また、大病後で、ブログコミュニケーションが直ちに取ることができないけれど、精一杯努力してお返事いたします。

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